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4th down gamble

「柳生大戦争」

 見逃していた海外ドラマ「シャーロック」の第一回を再放送ぶんでチェック。おもしろかったんやけど、どこがどうよかったのか忘れるくらい、新しく始まった「シャーロック2」の第一話がスゴかった。はじめのうちはオープニングのモリアーティとのグダグダなやり取りとか、「アイリーン・アドラーがSM女王とかふざけすぎやろ」とか、萎えるポイントも多かったんですが、中盤以降まさかの天井知らず。すんげー脚本だわ。で、二話目のタイトルが「バスカヴィルの犬(ハウンド)」とか。これだけで思わずイッてしまいそうになりました(笑)。
 「恥を知れ、ジョン・ワトスン。ハドソンさんがベーカー街を去ればイングランドは滅びるぞ」

荒山徹「柳生大戦争」
 柳生一族の大戦争の話……なんですが、ぶっちゃけ大戦争っていうほどのスケール感はない。っていうか、スケールそのものはデカいんやけど、柳生一族的にはいつものお家騒動の域を出てない感じです(笑)。
 つうわけで、メインは故あって朝鮮に逃げ込んだ柳生友矩を兄の十兵衛が追うみたいな展開。作者お得意の十兵衛ものですが、じつはそれほど印象的な活躍シーンはなかったり。むしろ作者が語りたかったのは、このお家騒動の背景で展開する物語のほうにあって、十兵衛は案内人としてそのオールマイティなキャラを体よく利用されたみたいな印象。導入部で語られる「檀君神話」ねつ造のくだりとか、こちらに素養がないのでピンとこないところもあるんですが、作者的には会心の出来なんではと感じた。惜しむらくは、このアイデア(陰謀)と柳生一族の争いがピタッとマッチしてる感が薄く、ググッと気持ちが乗ってくるような場面に乏しかったところでしょうか。文庫版に特別収録されたエピソードにどこか投げやり感が漂うのも、そのへんが遠因になってる(十兵衛もの飽きた?)のかなと思ったりしたんですが、どうなのか。まあ、とくに深い意味はないただのお遊びってのが真相のような気もしますが。
 ところで、物語の終盤にある朝鮮妖術が唐突に出てくるんですが、やたらディテールがしっかりしてるくせにサラッと説明だけで流されるという不自然な扱いやったんで調べてみたら、この妖術メインですでに一作書かれてるんですね。この作だけでは荒山十兵衛を堪能できないつくりになっているのも併せて、ある程度荒山作品を読み込んでから手に取るのが吉かと。
by nobody85 | 2012-07-23 22:51 | ミステリ | Comments(0)