4th down gamble

「月食館の朝と夜 奇蹟審問官アーサー」

 録画しておいた「裏切りの荒野」を観る。スペインが舞台のマカロニウエスタンという、ちょっと変わった作品。エライ場面のつなぎ方がせわしない(不親切や)なぁとか思ってたら、これ「カルメン」っていうオペラ(?)を元にしてるんですね。そういう話があることは知ってたけど、内容はぜんぜん知らなかったぜ……。
 というわけで、バリバリの西部劇を期待すると肩透かしを喰うかも。フランコ・ネロはガンマンって感じではなく、ミエミエの悪女に人生を狂わされるトホホな役回りで、「狼の挽歌」のブロンソンを思い出したり。そんななか、登場しただけで一気に画面を引き締める――というか、話のジャンルを変えてしまうクラウス・キンスキーの存在感が素晴らしい。

 大杉漣氏が死去。まだまだこれからやったのになぁ。

柄刀一「月食館の朝と夜 奇蹟審問官アーサー」
 皆既月食殺人事件。久しぶりの奇蹟審問官アーサーもの。今回は日本の山奥(?)が舞台ということもあってか、いつにもましてアーサーのキャラが浮いている。端的にいって、ヴァチカンからやってきた神父には見えない(笑)。
 内容のほうはいつもの柄刀ミステリで、氏の長所と短所がギュッと凝縮されたような出来映え。まず短所をあげると、ひたすら「いつになったら盛り上がんねん」というツッコミを強いられる助走部分で、ぶっちゃけ不可思議な二重殺人が起こったあとでさえ、たいした(少なくとも表面的な)盛り上がりはない。芸術や神学の薀蓄披瀝はべつにええけど、それが後段に向けた伏線かどうかも曖昧な、思いついたことをダラダラ述べているだけとも受け取れてしまう書きっぷりは、やはり明確な弱点に映る。今回俎上に上る謎は、アーサーが真贋を判定するような不可能興味ではないので、余計に作者のプレゼン能力の欠如が目立ってしまった印象で。逆に長所は、「これぞ柄刀ミステリ!」と快哉をあげたくなるようなラストスパート(解決編)にあって、ここから逆算すると、本編はもっとオーソドックスな館ものフォーマットに寄せたほうが、諸々うまく嵌ったように感じた。解決編に至り、ようやく「この建物はこういう構造やったんか」と気づかされる部分もあって、もったいないなぁと。“月宮殿”周辺のロケーションは登場人物の目を通してもっと詳細に案内してほしかったし、犯人が高所恐怖症なんてデータ類も、もっとあからさまでよかったやんっていう。一言でいって、もっともっと己が発想・構築した“謎”に自信を持つべき。
 ……なんか説教じみたレビューになってしもたけど、おもしろかったですよ。

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# by nobody85 | 2018-02-23 22:59 | ミステリ | Comments(0)

「不時着」

 エルモア・レナード「オンブレ」、けっきょく昨日ゆうてた二軒目の本屋でゲット(笑)。目次見てビックリしたんが「決断の三時十分」の原作も収録されていること。さらにビックリしたんが、その「三時十分発ユマ行き」がめっちゃ短いこと。原作が短編やってことは知ってたけど、文庫換算なら100ページはゆうに超えると思ってたぜ……。

「不時着」
 53人の犠牲者を出した航空事故の原因は自堕落なパイロットの操縦ミスだったのか? みたいな感じで展開する航空サスペンスの名作。'64年公開、ラルフ・ネルソン監督作。
 専門的な事故調査ものというよりは、操縦していたパイロット(ロッド・テイラー)の裏面を追っていくヒューマンドラマ的な色合いが濃くて、前者を期待して手に取った自分にはビミョーにハズレ感が漂ったんやけど、話が進むにつれまったく気にならなくなった。胡散臭さ満点やったパイロットの素顔が徐々に明かされていく過程にはようでけた冤罪ミステリ的な楽しさも横溢、堪能いたしました。終盤、“運命”がどうとかで事件が片付けられそうになったときはどうしよかと思ったけど、その後につづくサスペンスフルな趣向にはマジで手に汗握った。明らかになる“事故の原因”に少々脱力の感はあるものの、これは傑作でしょう。
 「ファイナル・デスティネーション」のインスパイア元という気がする。

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# by nobody85 | 2018-02-17 00:32 | レンタル映画館 | Comments(2)

「ホワイト・バレット」

 エルモア・レナードの新刊、しかも初期のウエスタンもの(!)が出てると知って近所の本屋へ行くも見当たらず。こういうこと、最近ホンマ多いです。ちょっと足を延ばせばすぐそこに二軒目の本屋があるんやけど、もうネットでいいやって、なっちゃいます。どうにもならない悪循環。
 で、いまさらレナードの新刊が出るなんてどういう経緯なんやろと思ったら、翻訳してるのが村上春樹らしく、氏の趣味なんですかね。村上春樹は「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」しか読んでへんけど、意外とレナードの世界観には合うかなと、期待半分不安半分な今日この頃。

「ホワイト・バレット」
 松平健(ルイス・クー)、菅野美穂(ヴィッキー・チャオ)、松田龍平(ウォレス・チョン)競演の三人芝居。久しぶりに観るジョニー・トー監督作。三人芝居といっても、主にスポットが当たるのがこの三人なだけで、芝居の形式としてはいたってフツー。原題が“三人行 Three”ってことで、あえてこういう表現を用いてみました。おまちがえのないように。
 病院を舞台にした一種の館もので、終始カメラがそこより外に出ない(玄関前のシーンはある)のが「わかってるよな」って感じ。犯罪者が収容される大部屋にドクターも常駐(?)してて、香港の病院はこうなのか、あるいは映画用に作ったセットなのか、ちょっとだけ気になった。登場人物の抱える葛藤が丁寧に描かれており、アクション抑え目でも十分に引き込んでくれる。もちろん最後には場違いなドンパチやるんやけど、ミョーなカタルシスがあって悪くはなかったです。どうでもいいけど、ウォレス・チョンの手下ってバリバリ有能に見えて、ぜんぜんやったな(笑)。
 「決戦・紫禁城」のときはあんなにキュートやったヴィッキー・チャオも寄る年波には勝てず(それでも綺麗やけど)。反対にルイス・クーはどんどん渋みを増していい感じになってきた。むしろもっと齢を重ねてからが勝負のような雰囲気もあって、これ地味に名優ルートに乗ったんちゃう?

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# by nobody85 | 2018-02-16 00:01 | レンタル映画館 | Comments(0)